部屋のコーディネイト

 家を建ててみるとわかりますが、いざその中に家具がどの位必要なのかわからないものです。その為業者まかせで買ってしまい、後でしまったと思う人が少なくないのです。単純に雑誌等で壁面収納家具が良い、システムキッチンが使いやすいと言われると、家庭の主婦はどうしても欲しくなってしまいます。その為に、改造や新築をしている人もいます。ところが、本当にシステムキッチンを有意義に使いこなしているでしょうか。TVの奥様番組でも、80%以上の主婦が飾りにすぎないと言っています。その場の雰囲気で決めてしまっているようです。システムキッチンでないと何か皆に遅れていると思い、メーカーのコーディネイターの言うままになってしまいがちです。
 壁いっぱいに収納家具の扉を作って、部屋の形もなにもなく、ただ収納されるだけでよいと考えると、その部屋は納戸になってしまいます。住んでいる本人も、10年20年と経つと教養も豊富になり、家族形態も変わってきます。その時また建築屋さんを入れて作り直さなければなりません。部屋の中に家具を置くと狭くなるからと言われますが、家具を置くと思ってその分広くしておけばよいことで、自分の部屋を使いよいように気分を変えたり、コーディネイトすることが必要です。
 柱、敷居、鴨居が良い色になってきても、合板を張り付けて簡単な塗装で作ってある壁面収納家具では、時が経つにつれて飽きてしまうものです。考え方によって、親子3代もつ家具を作っても、家がもたないと言われる人もいます。しかし、在来工法の家は手入れさえ良ければもつものです。奈良の法隆寺は修理をしながら1300年も使われているのではありませんか。
 自分の生活を大切にするならば、自分に合った家と部屋を選べばよいことであって、家具も家族に合わせ移動すればよいのです。ホテルの一室のように、合理的であるということだけで作りつけの家具では、住む人の心もロマンも感じられません。そこで私達が勧めている生活の美化運動、民芸運動が必要だと思います。物を造る、大切に使う、それにより生活の中に美しさが出てきます。たとえば玄関は一番来客が多い場所ですし、一番最初にその家に住む人達の趣味がわかる場所です。そこに下駄箱を作るなら、壁面一杯に作るようなことはせず、程良い高さにして、一輪の花を活けるとか、一枚の絵を飾ってみるとかすれば、お客様もホッとすると同時に、忙しい皆様も我が家に帰ってそれなりの気持ちになると思います。