手作りの家具

 現在の価格だけ高い家具は、カラーBOXを少し大きくし、ボンド等の接着剤で全て造ってあり、プラスチック系の早く乾く塗装で仕上げられています。早く造り、早くお金に換えたいと生産性の良さだけを求め、デザインですら造りやすく見た目に良い物を考え、本来求める物とは違った方向で設備をして家具を造っている企業が大多数です。
 私の提案している家具というものは、すくなくても親子三代に使っていただけるだけの耐久性、使い良さ、そして使って美しく変化し、生活の中にロマンを感じさせる様な家具です。先日お客様が”八十八のお祝いに椅子を贈りたい”とお父様と一緒に来て下さいました。お父様は「何年かしたらおまえが使うだろう。おまえの好きな椅子にしたらどうだ。」と息子さんに話していました。
 親が使い、子供、孫が使うということはどういうことでしょう。ドレッサーの鏡の中にお婆さんの懐かしい顔が想像出来たり、家族から遠く離れていても鏡に向かい「ありがとう」と言えるでしょう。古く磨かれた椅子に座れば、父親のことを、祖父のことをより身近に思い出すことが出来るでしょう。家具を通じて自分と自分を取り巻く者とのロマンを感じることが出来るのです。
 よくムクの家具は良いと言っていますが、いくら良い材料を使っても、良い職人にめぐり会わなければ良い品物はできません。良い材料を接着剤でつけているようでは、ムクの材料の無駄使いと同じ事です。なぜなら接着剤の寿命は大体10年とみているからです。仕口・ほず組・その他職人の技と良い材料を共に使わなければ良い物は出来ません。ムクだから重い、価値が高い、などと言っては、お客様に後で飽きられてしまいます。見せかけだけのムクの家具を選んではだめです。職人が100年、150年使ってもらおうと一生懸命技を使って物造りに励めば、おのずと皆様にも大切に使いたいという気持ちを持っていただけると思います。